京を語る

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第48号 2000.5.8発行
このページは、情報誌「京都」掲載記事からの転載です

精神伝統を生きた形で後世に残していきたい。源田 善朗 源田紙業株式会社

日本の伝統的なしきたりや習慣がずいぶん失われてきたように思います。ライフスタイルの変化や、核家族化による伝承の断絶など、様々な原因が挙げられると思いますが、私達は大切なことを見落としているのではないでしょうか。

結婚式などの冠婚葬祭、初老や還暦など人生の節目、さらに四季折々の行事や習慣などを通して、私たちは昨日までの続きを漫然と繰り返すのではなく、気持ちを新たにすることができると思います。それらは、派手さや豪華さを競うものでもなく、また形骸化しても意味がありません。簡素でもいい、大事なことは、己に対しても公に対してもけじめを示すことです。

かつて、しきたりや習慣は地方色豊かなものでした。たとえば、葬儀の水引の色。関東は黒色と白色ですが、京都をはじめ西日本は黄色と白色を使います。ところが、東京発信の冠婚葬祭のマニュアル本では、地方ごとの違いまで丁寧に掲載しません。このまま日本全国同じ約束事になれば、それはただ単に束縛するだけのルールになってしまうでしょう。

海外に滞在した経験から、日本の将来について不安を感じることがあります。まず、これほど通信手段や交通手段が発達し国境を感じさせない時代であるにもかかわらず、日本でしか通用しない制度や基準が依然としてあり、その視野の狭さに憤りを覚えます。さらに、日本人の共通認識として捉えられているしきたりや習慣の本来的な精神がいつのまにか正しく伝わっていないことが心配です。結局それは、受け継ぐこととそうすべきでないことを正しく判断できていないからです。時代を見据えながら変えていくべきところは変え、精神伝統といった根本的な部分は生きた形で残していかなければいけないと思います。

源田 善朗
源田 善朗
げんた ぜんろう
昭和21年生まれ。京都大学農業工学科を卒業後、サタケ製作所に勤務。同49年、 源田紙業株式会社に入社。京都府文紙事務機卸商協同 組合理事長。源田家5代目。
源田紙業株式会社
源田紙業株式会社
奈良時代、宝亀2年(771)の創業と伝わる。平安遷都とともに京都に移転。江戸時代後期に源田家が、八木家善兵衛の商売を引き継ぎ八木善源田商店となる。明治時代に入り、庶民に水引が普及するまで御所に納めていた。昭和61年、源田紙業株式会社設立。戦前までは、現在地にて水引の製造に携わっていたが、現在は水引を使った製品や結納などの祝儀用品、その他紙製品の卸売、印刷を取り扱う。
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