京を語る

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第42号 1999.5.7発行
このページは、情報誌「京都」掲載記事からの転載です

京都は、観光客の受け皿を充実させるべきです。田中 雅一 田中伊雅佛具店

今では、仏具といっても葬儀屋やデパートどこででも取り扱っており、売れればいいという感覚があります。よいものでも値がはると売れません。ですから生計を立てていくために職人さんが質を落としても数を作ったり、海外生産が当たり前になったり。そうやって粗悪品が出回ることになります。独自の決め事を守る意識が希薄化している最近の傾向も、よいものを見る目を損なっていっているように思います。いざ特殊なものを作ってくれと言われたとき、その技術を持つ職人さんがいなくなるのではないかと、私は危惧しています。

木工、彫刻、漆工、箔押、錺金具など、どの技術においても、最高レベルの職人さんがそろう町は京都しかありません。ですから、うちは八割か九割がた京都で作っています。東京遷都の際、職人さんも半分は移動したそうですが、両者の大きな違いは、京都にはお寺や神社、お花・お茶の家元など、ベースが依然と存在することです。その土壌が仏具だけでなく、さまざまな工芸を生み出してきました。それぞれが互いに影響を及ぼし合って文化を形成し、集積してきた土地であるから最高レベルのものができるのです。この立地条件が京都で商売することの良さだと思います。逆に、時として技術が伴わなくても、人件費が高いことがその欠点です。職人さん一人ひとりが誇りを持って、自分の技術に磨きをかける努力も必要だと思います。

京都のよきものを伝えていくにあたって不可欠な要素の一つは観光客です。しかし、清水寺はディズニーランドに集客数で負けました。確実に修学旅行生も減っています。旅行社の方から、「今の新しい京都駅には、団体集合口がない」ということを聞きました。これは、受け皿がしっかりしていないことの一例です。京都の伝統を後世に伝えていくためには、もっと開放的な姿勢と政策が必要だと思います。

田中 雅一
田中雅一
たなかまさいち
昭和27年生まれ。高校時代からアルバイトとして家業を手伝う。大学卒業後、入社。平成9年代表取締役社長に就任。70代目と伝わる。「各宗、宗派によって異なる約束事を覚えることがけっこう苦労します」
田中伊雅佛具店
田中伊雅佛具店
仁和年間(885~889)創業。創業当初から近世までは、鋳造品の法具を扱っていた。全国の真言宗、天台宗の仏具を取り扱う。もともと「伊雅」は「伊賀」と書いたが、「伊賀」の字は天皇家ゆかりの者にのみ許されるものとされ改名。現在の「伊雅」は、仁和寺の門跡からいただく。「納品時が最も緊張しかつそれが喜びに変わる瞬間」だと、やりがいを語る。
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