京を語る

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第39号 1998.11.7発行
このページは、情報誌「京都」掲載記事からの転載です

菅原道真以前の少彦名命をお祀りしています。。佐々部 昭彦 五條天神宮(天使宮)

天神というと、普通、菅原道真を祀っていると思われがちです。そのため、うちに学業向上を祈願しに来られる方もいます。しかし、ここでお祀りしているのは少彦名命です。国造りに尽力した二神、大巳貴命が『国つ神』といわれたのに対して、神王の命を受け天降りしてきた少彦名命は『天つ神』すなわち天神といわれました。この天神を「てんじん」ではなく「てんしん」と呼ぶ理由はそこにあるようです。境内の南側には『天使突抜町』という町名がついている地区があります。これは、少彦名命が天の使いであったからとか、あるいは、「てんしん」がなまって、「てんし」となったからなどといわれています。かつてはこの天使突抜町のあたり、つまりこの天神のある松原通から現在の六条通あたりまでは広大な鎮守の森が広がっていました。また洛中では最大の神社であり、清水寺と並んで平安京を守護する役割を担っていたようです。

うってかわって現在、五條天神はビルの谷間にひっそりとたたずんでいます。神社の維持経費を捻出するために、以前の建物を壊してマンションの一階の片隅に社務所を移しました。この周辺はテナントビルが増え、バブルのときに建ったマンションには空き部屋もあります。ここは人々の生活圏ではなくなり、今では町内あげての祭りや御輿もありません。

大きな神社が神社本庁という団体に所属しているのに対して、うちのような中小零細の神社は神社本教という団体に属しています。この本教の会合で、神社の活性化について話し合うのですが、現状維持が精一杯というところがほとんどです。そのような神社も奥深い歴史を秘めているところが多々あり、それをもっと皆さんに知ってもらえたらと思います。

佐々部 昭彦
佐々部昭彦
ささべあつひこ
昭和6年生まれ。高校卒業後、府職員として働くかたわら、立命館大学法学部の夜間部で勉学に励んだ。同45年、他界した父親の後任を務め、現在に至る。
五條天神宮(天使宮)
五條天神宮(天使宮)
社伝によると、平安遷都(794年)にあたり、空海が大和国宇陀郡から天神を勧請したのが起こりという。少彦名命・大己貴命(大国主命)・天照大神を祀る。農耕・病気退散・医薬・禁厭(まじない)の神として崇敬される。祭神少彦名命が薬の神とされるため、医家の祖神としても信仰を集めた。かつて節分祭には、無病息災を祈願する参詣者におけら餅と呼ぶ餅を授けた。現在の節分祭には、宝船図を授ける。
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