京を語る

記事を探す

第39号 1998.11.7発行
このページは、情報誌「京都」掲載記事からの転載です

景気が悪いと言っても、することは山ほどあります。。寺久保 進一朗 有次

継承は螺旋です。一代一代ぐるぐると積み重ねられ、一ミリでも上にのぼっていかないと、反対に落ちていく一方になってしまう。

次の代に繋ぐために、大事なものはいくつも在って、私はそれを『良い菌』のようなものだと考えています。店や職場に良い菌が充満していると、自然と人や環境が育まれます。その良い菌を増やし、守るように努めておけば、お店は長く続くんです。

まず、お客様に対して、100%のサービスは当然です。安くて良いのも、愛想良くて居心地好いのも当たり前の事なんです。言い伝えはとても強い力を持っていて、言葉で多くの人が世代を超えて繋がっていく。「あの店はいい」という一言が、孫の代に役立つかも知れません。そう感じていただくためにも、120%のサービスが必要なのです。勉強する事は商売人として当たり前ですから、昔ながらの店はあらゆる知識の蓄積があります。うちでは、お客さまには物を買うだけでなく、学習もして頂けるように心掛けています。

また、時代を見極めなければいけません。「昔売れたし」ではなく、今、何が求められているのか…。古いものがいいとか、新しいものがいいとか、ありえないのです。私はそれを見極め、職人に指示します。私が若い頃は、職人さんから多くの事を教わり、今は逆に、教えていく立場です。自然の流れで、積み重ねられていくのです。

景気が悪いといっても、することは山ほどあります。時代はどんどん変わっていますから、各自で頑張ったらそれで充分。それぞれの店が客を百人呼べるようになったら、それでいいんです。嫌でも町は賑わいます。全世界からお客に来てもらうことを目指せばいいんです。

寺久保 進一朗
寺久保進一朗
てらくぼしんいちろう
昭和14年生まれ。17歳の時に父の後を継いで店に入る。販売だけでなく、庖丁研ぎの指導、懐石料理、魚のおろし方教室なども企画。日夜、庖丁と向き合い、「他に能がないから」と剛胆に言い放つ18代目。
有次
有次
永禄3年、藤原有次が鍛冶職を始め、京都御所御用鍛冶として、禁裏の命を受け長く出入りする。泰平の世と共に需要の多くなった佛師用小刀の鍛造を始め、明治頃より、現在の料理庖丁及び、料理道具へと展開した。400余年の間、代々「心根」の入った手造品を送り出し続けている。その品は、日本だけでなく、外国の人たちにも愛用されている。毎秋「包丁供養」を行う。
〒604
中京区錦小路通御幸町西入
075-221-1091