京を語る

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第10号 1994.1.7発行
このページは、情報誌「京都」掲載記事からの転載です

今や良い技術とは昔の技術にいかに近付くかです。吉田 源之丞 吉田源之丞老舗

仏具に関していえば、延暦寺とのおつき合いが多いこともあって、天台宗なら誰よりも よく知っているぐらいの自信があります。天台、真言の密教法具は独特な造形をもってい て非常におもしろいんです。中には一生に一回しか扱わない商品もありますけど。

おやじがよく言うてました。「仏具は奥が深い。亀のような商売や。慌てんと一歩ずつ 前に出ればいい」って。不況の時代であっても仏壇や仏具の需要はおかげさんでなくなら ない。大儲けしようとか考えなかったら、何とかやっていける商売やと思うてます。

仏具の高級品はみんな京都です。木地にしろ塗り、箔、彩色、金工、金襴など仏具の製 作に必要な最高の技術が、京都に集約されていますから。日々、京都の職方さんを見ている私は、非常に値の張る仏壇であっても、自信を持ってお勧めすることができます。

問題は、10万円の高度な仕事をする職方と、1000円の仕事を数多くこなす職方では、1000円の仕事をする職方の方が儲けているということなんです。いくら腕のよい職方と評価されていても、路地の奥でコツコツと仕事をしている親の姿を見て、子供が仕事を継ごうと思わない。私の心配はそこなんです。京都の仏具の質を保つためにも、職方さんに安定して仕事をまわしますし、若い仲間らと仏具の工業団地の構想を語り合ったりもしています。今や、よい技術とは、昔の技術にいかに近づくかってことなんですね。

吉田 源之丞
吉田源之丞
よしだげんのじょう
昭和28年生まれ。同志社大学商学部卒業。横浜にある同業の店で2年間修業。15代目吉 田源之丞を襲名したのは、27歳の時。同時に、日本でただ一人の大仏師の称号を受け継ぐ。多くの職方を束ねて仏具を製作。全国の寺院をまわる。
吉田源之丞老舗
吉田源之丞老舗
寺社などの荘厳および、仏事に使用する仏具などを製造販売。創業は元亀3年(1572)。織田信長による比叡山焼打ちの翌年のことで、比叡山再建に尽力した。古仏の鑑札を有していたこともあり、店舗敷地内の蔵には、推古時代の仏像や鎌倉仏などの美術品を所蔵する。寺院の用達を主な商いとしているが、店内には家庭用の仏壇や三具足、小さな持念仏などを置く。
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