季節の雅を和菓子であらわす 京菓子司 源水

観光地の傍に静かに佇む京菓子司

徳川家康ゆかりの二条城。世界遺産にも指定されているこの地には絶え間なく人が訪れ、一年中賑やかさを呈している。

しかし少し東のわき道にそれると、辺りは嘘のように静かで、時間の流れが穏やかだ。

その地にて優雅に暖簾をはためかせているのが、京菓子司 源水である。

源水は、江戸時代後期の1825年創業。
初代の近江屋源兵衛の名にちなんで、豊富な水をたたえる近江の地から「水」、「源兵衛」の頭文字から「源」を取り、源水という屋号が生まれた。

「創業当初は「源水軒」という名前でした。ロゴの「源水」の文字が上寄りに配置されているのは、当初はその下に「軒」という文字が入っていたからなんです」

七代目であるご主人、井上清文さんは語る。

江戸時代後期から続く、京菓子司「源水」の外観。
文字が少し上寄りだという源水のロゴ。包装紙にもこのロゴがプリントされている。

文人に愛された小さな棹菓

源水の代表銘菓として名高いのが、松の幹を表現した半生菓子「ときわ木」。

「ときわ木」とは常緑樹を意味し、見た目よりあっさりとした甘みが特徴だ。大納言小豆を羊羹地にのせ、上にすり蜜がかかったこの菓子は、文豪・川端康成にこよなく愛されたという。現代でも俳優や歌舞伎役者など、著名人に「ときわ木」のファンは多い。

源水の全ての菓子の製造を手がける井上さんは、平成19年に(社)全国技能士会連合会が認定する全技連マイスターに選出された。
全技連マイスターとは、ものづくりを極めた各業界のプロが選出される栄誉である。和菓子製造部門では全国に6人しか認定されておらず、京都では、数ある和菓子店の中で井上さんが唯一の認定者だ。

松の幹にみたてた情緒豊かな代表銘菓「ときわ木」。日持ちもするので贈答にも喜ばれる逸品。

全技連マイスター認定者に与えられる楯と川端康成先生の年賀状。

花鳥風月を忠実に再現、工芸菓子

その確かな腕は、目にも華やかな工芸菓子からも垣間見ることができる。工芸菓子は鑑賞用の特殊菓子の総称で、寒梅粉に砂糖と食紅を合わせた材料から、本物と見間違えるほど精巧な季節の花などを形づくる。明治33年にパリで開催された「第2回万国博覧会」に日本が工芸菓子を出品したことで、その芸術性、高い技術力が世界的な評価を得るようになった。

ひとひらづつ可憐に重なった牡丹の花びら、周りにはためく蝶の軽やかさ。どれもが菓子とは思えぬ美しさで、見るものを絵画のごとく魅了する。

菓子博覧会出展の際の源水の作品。立派な松と季節の花が見事に再現されている。

季節の雅を生菓子に託して

工芸菓子と同様、井上さんの美意識が最大限に発揮されるのが、風雅な生菓子だ。

「工芸菓子は『モチーフを忠実に再現する技術』。生菓子は『モチーフを上手に簡略化する技術』。丸い生菓子をちょっとつまんだり、ひねったりすることで、それらしく見せなければいけない。センスの問われる難しい部分です。」

京菓子にはそれぞれ名前が付けられるが、その「銘(菓子の名前)」も、菓子の見かけや味と同様に重要だ。と井上さんは考える。

たとえば栗を象った生菓子「山づと」。

「山づと」とは「山の土産、野の幸」という意味。そのまま「栗」と名付けず、間接的に秋の自然の恵みを指す名前を付けることにより、菓子に奥深さが増す。

和菓子の名前を付ける際、古今和歌集や源氏物語など、古い書物を参考にすることもあると語る井上さん。
京都で生まれ育った菓子職人は、菓子作りと同様言葉も巧みに綴り、ただでさえ美味な菓子に優雅な彩りを与える。

「四季折々の風情が感じられてこそ、京菓子と呼べると思います」

井上さんは微笑んだ。

2008年11月 取材

源水の全ての菓子を手がける七代目井上清文さん。1825年創業の歴史を肌で感じられる、落ちついた店内にて。
華やかな生菓子

工芸菓子や生菓子の制作工芸など、源水の魅力を動画でご紹介!

京菓子司 源水のペ-ジを見る

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