京を語る

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第53号 2001.3.9発行
このページは、情報誌「京都」掲載記事からの転載です

いいものを作って売っていれば間違いはない。猪飼 一郎 壺屋いかい

うちは、主に料亭など他府県のお客様が多かったのですが、昭和五十年代に店売りに力を入れはじめてから、観光のお客様も増えました。商売は、自分の売りたいものだけを売っていては駄目ですが、かといって店のポリシーが感じられないのも駄目。私としては、常によりいいものを、そしてせっかくうちに来ていただいたんだから京都らしい品を提供していきたいと思っています。

昔からうちで言われてますのは、「商売は大きくするな」ということ。商売を広げると、どうしても安く大量に売り出さざるを得ない。ところがそれではいいものは扱えません。これからますます、器というのは、趣味性が高くなっていくでしょうから、そうしたお客様の要望に応えるためにも、私の目の届く範囲で商品を扱わんといけません。

京都の伝統産業は、どの業種であれ、厳しい状況ではないでしょうか。これから生き残るためには、自分とこのオリジナル性を出していく必要があると思います。それで最近は、私の息子が作ったオリジナル商品を店に並べるようにしました。自分とこで、いいものを作って売る。これに徹していれば間違いはないと思っています。真実はひとつ。バブル期にあったような商売の仕方では、続くはずありません。

地方に旅行した時、「京都の五条坂から来ました」と言うと、「なんでわざわざここに来たの?」と言われます。日本一の観光名所にいるのにわざわざ何しに来たのかということでしょうが、それほどの土地で商売させてもらっているんだなと改めて感謝し、誇りを感じています。それだけに、全国から来ていただくお客様の期待に応えていきたいですね。

猪飼 一郎
猪飼一郎
いかいいちろう
昭和7年生まれ。日吉ヶ丘高校卒業後、たち吉で2年間の見習いを経て、店を継ぐ。「自分の性分に合った商売ができたら最高です」と商いに専念する5代目。
壺屋いかい
壺屋いかい
初代壺屋喜兵衛が、江戸末期に五条坂にて創業。清水焼を主体に陶器全般を扱う。戦後、疎開先から五条に戻り、4代目が現在地にて商売を再開。全国の料亭などから食器の注文を受ける。昭和53年には清水の茶碗坂に新店舗をオープン。同59年より店舗奥にて作陶を始め、平成8年には丹波日吉町に工房を構え、陶芸教室も開く。最近では、当店オリジナル商品の販売に力を入れる。
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