京を語る

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第46号 2000.1.7発行
このページは、情報誌「京都」掲載記事からの転載です

“和”の追求、真の安らぎはそこにある。森 長司 (株)森長老舗

戦後、生活の洋式化が進みましたが、阪神大震災以降でしょうか、「和」が見直されてきたように思います。震災前には、派手にお金を使うけれど、もののよしあしを吟味せずに買う人が少なくなかった。ところが震災後、倒壊した町や家を目の当たりにして、人々は見せかけの派手さや珍しさにむなしさを感じた…。そこで、本物志向が高まり、日本人の原点であ「和」が復権してきたのだと思います。

以前、こんな例がありました。奇抜さを狙って突拍子もないデザインの喫茶店がオープンしたけれども、なかなか客が寄りつかない。どうにかしてくれと頼まれまして、石だたみや石灯篭など「和」のエッセンスを取り入れて改装したところ、常連客が増えたのです。このことからも、私達の拠り所や安らぎといったものは、私達の先祖が積み上げてきた伝統とかけ離れてはありえないと感じました。

ただし、伝統工芸はそのままではどうしても野暮ったい。優しくまたシャープに現代風のアレンジを加えることによって、それは生きてきます。私には「親からもらった血」「土地に根ざす血」、「今を生きる血」という三つの血が流れているんですよ。このうち「今を生きる血」というのが、先祖代々から培ってきた技術を現代に生かす精神といったところでしょうか。

全国から注文をいただきますが、なかでも関東特に東京の人が要求するレベルは高いですね。それは、京都への憧れが背景にあってのことです。しかし、肝心の京都はというと、伝統と名のつくものは先細り傾向にある。下手に保存して、「いかにも」というわざとらしさだけが残る死んだ町になるのはごめんです。行き着くとこまで行って、大きな壁にぶつかってから再出発するのも京都にとってよいかもしれませんね。

森 長司
森 長司
もり ちょうじ
昭和24年生まれ。高校卒業と同時に家業を継ぐ。「私に安らぎを与えてくれる『和』は、どこまでいっても終わりのない課題です」と日々、職人とともに時代のニーズに応える「和」を追求する6代目。
森長老舗
森長老舗
文政4年(1825)、東京の白生地屋「白木屋」から暖簾分けし、京表具屋として創業。現在の屋号は、明治初期から。ふすま、屏風、衝立、軸といった表具のほか、現在は障子や戸などの建具、現代家屋にも合う和家具を扱う。また最近では、和室や和風インテリアなど「和」のしつらえ全般に関する相談にも応じる。
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